ピンチョン的世界観に基づくメディア史

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グラモフォン・フィルム・タイプライター〈上〉
フリードリヒ・キットラー Friedrich Kittler 石光泰夫 石光輝子
筑摩書房
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 フッサールを投げ出した後に読み始めた本。ドイツのメディア論者、フリードリッヒ・キットラーの代表作。あまりにおもしろくて上巻を一気に読む。


 冒頭からトマス・ピンチョンの引用。もうその次点で「ただものではないな……これ」とビンビンに伝わってくるんだけど、その後に続くのも極めてフィクショナルにメディア・テクノロジー史の流れをまとめあげる強烈な言説。ビートルズ、ジミ・ヘンドリックス、ピンク・フロイドが混入したり、バロウズやよくわからん小説が引用されていたり……ととにかくサイケデリアを感じてしまうほどにぶっ飛んだ語り口で、言っていることがよくわからないのが難点なんだけれど、異様にテンションが上がる変な読書感を味わう。録音・録画テクノロジーの発展が戦争の歴史とシンクロしていくところなどは無茶苦茶カッコ良いです。こんな風に歴史を語ることができたら、ほんとに素晴らしい、と思う。


 ヘタな小説よりずっと面白いので、ピンチョン愛好者の皆様方には自信を持ってオススメします。こんな頭がおかしい本が文庫になって読める、って世の中狂ってきてるよ!


 キットラー読みながら、アドルノについても少し考えをめぐらしたのだけれど、それについては下巻を読み終えたときに書きます。



1923年にはモホリ=ナギが、「再生する楽器であるグラモフォンから再生ではなく創造する楽器をつくること、そしてあらかじめ吹き込むべき音響なしにいきなり必要な溝をそこに掘り込み、そのレコード盤上で音響という現象じたいを発生させるようにすること」を提案している。



 あとこの記述には結構ビックリした。1923年で「現実にはどこにも存在しない音をグラモフォンを使用して発生させてしまえ!」という発想が早すぎる。モホリ=ナギ、すげぇ。ピエール・シェフェールやカールハインツ・シュトックハウゼンより30年以上早く「新しい音」を夢想しているところとか、たぶんそこには未来派的な誇大妄想感があったりしたんだろうな、とかに燃える。





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