飯田泰之 『飯田のミクロ 新しい経済学の教科書1』

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飯田のミクロ 新しい経済学の教科書1 (光文社新書)
飯田 泰之
光文社 (2012-10-17)
売り上げランキング: 8940
「あの」(!)飯田泰之が「新しい経済学の教科書」シリーズの第一弾を執筆! 第一弾はミクロ経済学! マクロ経済学を専門とする飯田がどのようにミクロ経済学を料理するのか!? といったところが注目されていそうな本書ですが、刊行されてからそんなに話題になってないのがアレです……けれども、とても堅実な良い本。最近でている経済学がらみの本ではクルーグマンやケインズのマクロ経済学の本をいくつか読んでおり「マクロ経済学を適当に読んでおけば、新聞読んでなんか知ったような口をきけるようになるんじゃないの〜?」とか鷹を括っていた私でしたが、いきなり「マクロ経済学のひとつひとつの想定にはミクロ経済学的な基礎があります」(だから、ミクロから入るのが妥当だよ)とたしなめられたような気分になりました。

分かりやすいつもりで書いてるのだろうが伝わってない変な比喩やつまらない冗談など一切なし、「サルでもわかる!」とか「絶対わかる!」とか煽ってもいない、あえて悪い言葉で言うと「地味」とさえ言える書きぶりが逆に鬱陶しくなくて、抵抗なく読めるのがまず良いところ。

しかし、そうした地味さのなかで「経済学者が無意識に使ってしまって、一般には理解されにくい経済学の思考法や価値観」についての説明が丁寧におこなわれています。ここでは経済学がなにを前提として進められてきたのか、どういった状態を経済学は「良い状態」としているのか、などが要所要所でしっかりと定義されながら話が進められていく。これが読者を迷い道に進ませない工夫として設けられているように思われます。そこを押さえていると、さまざまな分析手法や考え方も「なにを言うための道具なのか」というところが分かってグッと面白くなっていく。読後に「あ、経済学ってこんなに人間的な学問なのか」という風に経済学に対する印象が変わった感じがするのは、この部分のおかげが大きい。

また分析対象が後半になるについれて大きくなっていくのも面白いです。最初は個人消費者から始まって、次に企業間の競争、それから公共経済の話……という風に話のスケールが大きくなり、それに応じて分析方法も難しくなっていく。最後のほうで取り上げられている例は、環境権であるとか再分配政策であるとかミクロの話かどうか判断がつかなくなってきますが、大きな分析対象のなかでの個人のふるまいへと話が還元されていくのでブレてはいないのでしょう(逆に、大きな話をしているほうが、新聞に載ってるような経済政策的なお話とマッチして『教養』っぽさもある)。

惜しむらくは、堅実過ぎて売れないんじゃないか、と心配になる点(『絶対わかる!』とか『これ一冊で!』とかついてたほうがやっぱり売れそうだし、あと、池上彰が書いてるとか。『飯田の○○』って冠がついても、新書でお手軽に教養を身につけたい、と普段から思っている新書消費者は知らないのでは)。あと、数式を(少ないとはいえ)使うなら横書きの本のほうが良いよなあ、とか。

経済学という教養 (ちくま文庫)
稲葉 振一郎
筑摩書房
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「教養としての経済学」であれば、そのものズバリ『経済学という教養』という本を思い出してパラパラめくってみたら「日本の経済学史と公共社会論」というこの本の性格が、この『飯田のミクロ』のずーっと先のほうにひもづいているような気もしましたね。

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