T. H. ガスター 『世界最古の物語: バビロニア・ハッティ・カナアン』

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世界最古の物語―バビロニア・ハッティ・カナアン (1973年) (現代教養文庫)
T.H.ガスター
社会思想社
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イギリス出身の宗教・神話学者、Theodor Gaster(1906 - 1902)が書いた一般向けの本(ブックオフで回収)。黒海、地中海、カスピ海に囲まれたオリエント地域の古代民族が粘度板に刻んだ楔形文字によって伝えた神話を、現代人に読みやすい形でまとめた入門書、とでも言えようか。これはなかなかの良書で、単に物語を紹介しているだけではなく、著者による解説がかなり詳しくおこなわれているのがありがたかったです。著者は比較文学的な手法によって、ここに収められた物語を、ギリシャやローマ、エジプトの神話、あるいはアフリカやインドの民話、旧約聖書などと比較しつつ、忘れられてしまった物語の意味を解釈しようとする。ときに古代の物語の表現が、現代の文芸ともひもづけられるのも刺激的でした。収録された13篇のお話は、バビロニア、ハッティ(ヒッタイト)、カナーンのそれぞれの地域の世界創造や神々の戦いです。隣接地域であるせいか、ある地域の神話に別な地域の神々が登場する(神が借用されるように)のも面白いです。

また本書の魅力のひとつには、「はじめに」で書かれた、筆者が本書を執筆するために用いた技法・手法であったり、物語の歴史的背景についての記述もあげられるでしょう。この記述にはもう歴史に込められたロマンティシズム、と言いましょうか、何かを調査して知られざることが明らかになったという発見の悦びが封じ込められている気がします。本書で取り扱われる物語は、4000年以上前のものであるわけです。すると、記録された文章をそのまま訳してもまったく意味がわからなくなってしまうことがある。とくに身振りによって伝えられる意味や、当時でいうところの紋切り型の表現の意味が、いまではよくわからない。そうした失われた意味を当時の法律上の記録から発見されたりする、というのですから、なんかこう、考古学、燃えますね、という感じ。なお、仏訳の序文には、エリアーデが文章を寄せています。ブックオフで100円で投げ売られてたのでいい加減な本かと思ったら、結構ちゃんとした本だった。

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