Miles Davis / Doo-Bop

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Doo Bop
Doo Bop
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Miles Davis
Warner Bros / Wea (1993-05-31)
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Twitterなどを見ていると時折「あれ、この人、こんなことを言う人だったかな?」と思う瞬間がある。年を取ったり、付き合っている人が変わったり、日々人間は変化していくものなので、同じ人がずっと同じ考えでいるわけはないとはいえ、それは長い時間をかけた連続性をもつ変化だから周囲も気がつかないことのほうが多い。大きな事件や事故で大きく人間性が変わるなら誰しもがその変化に気づく。インターネット上で「あれ?」と思うのは、なんか今この人は勢いに乗ってる感じがするな、なんだか有名になってきているな、というときの変化だったりする。

山形浩生さんが「フォロワー数で変わるツイッターのメディア性」という記事に書いている通り、インターネット上では、自分が好ましいと思う反応だけを取り出してしまうので、他人からの批判が耳に入らなくなり、自分の間違いに気づかなくなる、ということがある。それとは別に、そうした人気者が、自分のまわりに形成される取り巻きのようなものの期待に応えるためのアウトプットをしていることもあると思う。人気者が「こんなことを書いたら、読み手は喜ぶだろう」という予測に基づいてネタを吐き出す。それに対して、取り巻きが「いいね!」したり、星をつけたりする。それが一層、人気者の「周囲の期待に応えよう」という動機を強くする(しかもそのとき批判的な反応はザックリと消されてしまう)。そうするとひとつのサイクルのできあがりである。

承認欲求と承認にともなう快でまわる経済、とでも言うのか、この凄まじい循環から抜け出せる人はなかなかいらっしゃないようである。ただ、そうして人気者が変な方向にいき「あー、なんかこの人、最近、きっついな」と思ってきたら、私の方から見ないようにできるのがインターネットの特質でもあるから大した問題ではない。時折、風の便り的なもので聞こえ伝わってくる情報で「あ、まだあんな感じなのか……」と感慨深い感じになってしまうこともあるんだけれども。変なことにならずに、インターネットという道具を冷静に使える人気者の人は、長いスパンでの人気を維持しているようにも思う。

承認欲求はめちゃくちゃ強かったはずだが、周囲の期待とかはあんまり考えていなかったであろう、マイルス・デイヴィスは。リリース20周年だがとくに記念盤が出ているわけではない遺作『Doo-Bop』を聴く。アガパン期からの活動停止、からの復活以降マイルスについては、ちょっと……えーっと……みたいな感じであって、それは現在の松本人志のキツさとも重なるのだが、とにかく、キーボードの音色がヤバいのと、ブート盤で聴いたライヴでのマイルスのラッパが泣けるほどのヨレヨレであって、音がカスカスの「Human Nature」が半ばトラウマになっている。とはいえ「果たして復活以降のマイルスに再評価はくるのか?」と常日頃思っていたのだが、これは良かった。カッコ良い。 もしかしたら時期的に今一番カッコ良いマイルスのアルバムは『Doo-Bop』であるのかもしれない。

マイルスは死ぬ間際にヒップ・ホップにいった、最後まで革新をやめないスゴいミュージシャンだ、マイルスはエラい、スゴい、よっ、帝王、というのがこのアルバムに対する世間的な評価である。なんでも、ある夏の日、マイルスがマンションのドアをあけていたらストリートの音が部屋に入ってきて、彼はこのアルバムでそのストリートのサウンドを表現しようと思ったんだって。しかし、これが90年代初頭のストリートの音なのか。マイルスが亡くなった1991年、日本はバブル末期、ソ連崩壊、俺6歳となんかスゴい年だが、ヒップ・ホップというよりも、広い意味でブラック・コンテポラリーを指向しているようにも思われ、それがイージー・モー・ビーの趣味によるものなのか、ジャズとヒップ・ホップをあわせたらこうならざるをえなかったのか、よくわからないが、強烈に夜っぽい印象が残る不思議な魅力のアルバムだ。

それにしても、マイルスのアルバムを自覚的に聴くようになってもう10年ぐらい経っているんだが、まだ掘るところがある、まだ驚かされる部分がある、っていうのはホントにすごいと思いますよ……。

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