田中康夫 『なんとなく、クリスタル』

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新装版 なんとなく、クリスタル (河出文庫)
田中 康夫
河出書房新社
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2015年のテーマである田中康夫だが、一番の代表作『なんとなく、クリスタル』は中古で全然見つからずに新刊で買ってしまった。小説の本文と同じぐらい注がついている、それがナボコフの『青白い炎』のようだ、という噂では聞いていたけれど、いや、すごい小説だな、と思った。衝撃を受けた小説ってわたし、そんなにないんですが、これはそのうちの一冊に数えられるであろう。読んだタイミングも良かったな、ちょうど30歳で(そう、こないだ三十路に突入したんです)「クリスタルなアトモスフィア」な状態になってしまっている感じがあって、すごく今の気分にあっている、と思った。

普通よりちょっと上の贅沢ができる金があって、思想的・政治的にはまったくなんの主義主張もなく暮らしている(ただ、主義主張はないけど、馬鹿だなあ、と思うことはたくさんある)わたしみたいな人間には、このクリスタルなアトモスフィア、すっげーしっくりきてしまったんだ。描かれている1980年の風俗はわからないですよ、まだ生まれてすらいないし。でもさ、解説で高橋源一郎が書いてるみたいに「誰にも予測できない不安な未来」に国が向かいつつあるなかでも、クリスタルな感じは生きている、と思った。

そもそも、わたしはこのクリスタルな感じを全然に誤解してた。景気が良かった頃のなにも考えてないパーッとした雰囲気のことかと思ったら、徹底してそういうのをバカにしてるんですよね。時代の流れに乗りつつ、バカにしてるんですよ。でも、バカにしてる方も、完全に勝ち抜けして超越的な視点から下々をバカにしてるんじゃなくて「自分も、この先どうなるんだろうな〜」っていう不安はうっすらあるの。だけど、どうにかならないために、頑張ろうとかはない、っていうね。

これ、今でいうとアラサー年収600万円ぐらいの独身人間が、年収300万円ぐらいで維新の会とかヘイトスピーチとかやってる人をバカにしてる感じにすっげえ似てる気がするんだよ。

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