P.O.クリステラー
東京大学出版会
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ルネサンスの思想家、人文主義者たちは、中世の人たちを否定したわけではなく、むしろ、その知的伝統のうえにルネサンスの知識人たちの営みもあったのだ、とクリステラーは言います。ここに過去からの革新ではなく、過去からの延長のルネサンスが描かれることになる。そうした歴史観に対して「では、『ルネサンス』という現象はなんだったのか? そんなものはなかったのではないか(クリステラーはその時代におきた新しい動きを軽視しているのでは)」という批判もあったようです。もちろん、ルネサンスは単なる延長ではなく、プラトン主義の復活や、異教の教義とキリスト教の教義の融合などの動きが生まれていて、本書では、そのような伝統の延長線上におこった新しい潮流が教科書的に説明されている。あくまで教科書的な記述ですので、細かいところを深く突っ込むわけではありません。それゆえの退屈さもあるのですが、もし初めてルネサンスの思想史に触れるのであれば、現在でも使える本だと思いました。これ一冊読めば、思想史の見取り図のようなものがおおまかにつかめるようになるハズ。
ちょっと残念なのは、人名の日本語転記がかなり雑。訳文が読みにくいわけではないのですが、マルシリオ・フィチーノが、あるときはマルシリウス・フィッチーノだったり、ホメロスだけホーマーになってたり、読んでて気になる点がいくつか。ちょっと古い翻訳ですから仕方がないのかもしれませんが、もし復刊されることがあれば出版社の方にはそのあたりを整えてほしいところです。
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