昨年末に公演延期となっていた菊地成孔ダブセプテットのライヴにいく。ダブセクステットから、トロンボーンのメンバーを追加し、「電子音楽/ジョージ・ラッセル/エリック・ドルフィー/菊地成孔/クールストラッティン」という新たなコンセプトで、ライヴのみの活動、となった当バンドは、多様な菊地成孔の音楽のなかでももっとも硬派、というか、オーセンティックな感じがあるあまり、逆に突き抜けて尖りまくっている感じになっている。開場時からけたたましいアナログ・シンセの宇宙的サウンドが流れており、菊地成孔のDJによるシュトックハウゼンか!? と思いきや、パードン木村によるインプロヴィゼーションで、それもあわせれば2時間弱、たっぷりと素晴らしい演奏を堪能できた。いや、すげーうまい……うまいとしか言えない。フロント陣はもちろん、リズム隊のあっつい演奏は燃えるしかないのだ(もはやこのリズム隊に抱かれてしまいたい)。3管編成になったことによって、キメの部分にハーモニーがもうけられたり、3者が短いアドリブを順番にとりあう部分など、大変興奮して聴いた。また観たいですね。あと録音も欲しい……。
テクノボン posted with amazlet at 11.05.05 石野 卓球 野田 努 JICC出版局 売り上げランキング: 100028 Amazon.co.jp で詳細を見る 石野卓球と野田努による対談形式で編まれたテクノ史。石野卓球の名前を見た瞬間、「あ、ふざけた本ですか」と勘ぐったのだが意外や意外、これが大名著であって驚いた。部分的にはまるでギリシャ哲学の対話篇のごとき深さ。出版年は1993年とかなり古い本ではあるが未だに読む価値を感じる本だった。といっても私はクラブ・ミュージックに対してほとんど門外漢と言っても良い。それだけにテクノについて語られた時に、ゴッド・ファーザー的な存在としてカールハインツ・シュトックハウゼンや、クラフトワークが置かれるのに違和感を感じていた。シュトックハウゼンもクラフトワークも「テクノ」として紹介されて聴いた音楽とまるで違ったものだったから。 本書はこうした疑問にも応えてくれるものだし、また、テクノとテクノ・ポップの距離についても教えてくれる。そもそも、テクノという言葉が広く流通する以前からリアルタイムでこの音楽を聴いてきた2人の語りに魅力がある。テクノ史もやや複雑で、電子音楽の流れを組むものや、パンクやニューウェーヴといったムーヴメントのなかから生まれたもの、あるいはデトロイトのように特殊な社会状況から生まれたものもある。こうした複数の流れの見通しが立つのはリスナーとしてありがたい。 それに今日ではYoutubeという《サブテクスト》がある。『テクノボン』を片手に検索をかけていくと、どんどん世界が広がっていくのが楽しかった。なかでも衝撃的だったのはDAF。リエゾン・ダンジュルースが大好きな私であるから、これがハマるのは当然な気もするけれど、今すぐ中古盤屋とかに駆け込みたくなる衝動に駆られる音。私の耳は、最近の音楽にはまったくハマれない可哀想な耳になってしまったようなので、こうした方面に新たなステップを踏み出して行きたくなる。 あと、カール・クレイグって名前だけは聞いたことあったけど、超カッコ良い~、と思った。学生時代、ニューウェーヴ大好きなヤツは周りにいたけれど、こういうのを聴いている人はいなかった。そういう友人と出会ってたら、今とは随分聴いている音楽が違っただろうなぁ、というほどに、カール・クレイグの音は自分のツ
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