A Culture of Conspiracy: Apocalyptic Visions in Contemporary America (Comparative Studies in Religion and Society)
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Michael Barkun
University of California Press
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地底に住む爬虫類人や、マインド・コントロール、プレアデス星団からのメッセージ、アトランティスやムーなどの失われた大陸、シャンバラ帝国、地球空洞説……。あまりにキワドい研究対象のラインナップは、読んでいてめまいがしそうになってくる。こうしたアレコレの起源がどこにあるのか、だれが有名にしたかなど単純に面白かった。神智学で有名なブラヴァッキー夫人もアトランティスとかムー大陸にお熱だったそうで、19世紀後半のヨーロッパのオカルト主義者のあいだでは、失われた大陸ブームがあったとか。ハトン司令官こと、ギェオルゴス・ケレス・ハトン、自称、銀河間連合艦隊の司令官であり、地球人たちを四次元宇宙に移民させるプロジェクトの責任者がいろんな本を出してるのも傑作。また「ヒトラーは地下のトンネルを抜けて地底都市に逃げ、空飛ぶ円盤の技術を開発した!」とか言う話が、アメリカ同時多発テロ事件以降のアル・カイーダに変奏され、ビン・ラディンは地底人とつるんでいると言われた、という話も、妄想が合併症的に広がっていく様を伝えてくれる。
その一方で、アメリカのサブカルチャー文化圏でどのように陰謀論が広まっていたのか(やはりインターネットの力は大きい)、なぜ科学の時代に疑似科学や実証できない知識が生き残れるのか(実証するシステムから離れたところで流布し、実証システムも相手にしないから駆逐されない)などの分析は特段目新しいものではない。そもそも本書はどうして人が陰謀論にハマってしまうのか、とかの根源的な問いに答えてくれるものではない。ただ、本書を読みながら感じ入ってしまうのは、陰謀論者の人たちの心性と宗教的な心性との近さだ。ロックフェラー家がこの世のすべて支配している、いや、実はその裏にはさらに宇宙人がいるのだ、いや実は宇宙人と見せかけて古代の地球を支配していた邪悪な爬虫類人だ……陰謀論者たちは、こんな風に世界を体系だてて説明してみせる。しかし、そこで説明されていることがらは検証のできない触れることのできない世界の話だ。陰謀論者たちはその超越的な世界に到達できる神秘主義者、としても捉えられる(ちなみに、本書の神秘主義についての知識についてはジョスリン・ゴドウィンが助言を与えているとのこと)。
実際、陰謀論者の言い分は神学的な議論にとても近いものがある。たとえば「すべてを支配する秘密の権力があるならば、なぜ、ずっと秘密ではなく、権力の存在を匂わすようなヒントが漏れてしまうのか、そんなに絶対的な力であれば、ずっと秘密であるはずでは」という問いかけに対して、陰謀論者たちは「ずっと権力の存在が秘密であるならば、権力の存在を感じることができない。支配者は時折自分たちのパワーを知らしめるために、ヒントを与えるのだ」と答える。この説明はまるっきり奇蹟の話と重なってしまうし、中世の神学者たちが畸形の誕生から神の力を感じたのとまるで同じものに読めてしまう。こうした信仰に関係する心性の類比からは、「一般的な」我々が科学や、システムを信頼する心性がどのようなものであるのかを考えるキッカケも導きだせるように思う。
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