アリストテレス知性論の系譜――ギリシア・ローマ、イスラーム世界から西欧へ posted with amazlet at 15.09.10 小林 剛 梓出版社 売り上げランキング: 406,862 Amazon.co.jpで詳細を見る アリストテレスの『霊魂について』でおこなった知性論が、その後、アフロディシアスのアレクサンドロス、テミスティオス、アル=ファーラービー、アヴィセンナ、アヴェロエス、アルベルトゥス・マグヌスによってどのように解釈されていったのかを、彼らがおこなったアリストテレスのテクストへの注釈を辿ることによって整理した本。アリストテレスの時代から、アルベルトゥスの時代までだいたい1600年ぐらいの時間が経過しているのだが、その長いスパンでの知性論の変遷を捉えた本としては、日本語で読める(たぶん)唯一のものなので初学者には大変有意義な本であろう、と思う。 有識者によれば、本書巻末でも「多大な影響を受けた本」として挙げられている、Herbert Alan Davidson, Alfarabi, Avicenna, and Averroes, on Intellect: Their Cosmologies, Theories of the Active Intellect, and Theories of Human Intellect をアンチョコにしているのに「さも自分が考えました」という風に議論を進めているのは問題だ……ということだが、わたしは学者ではないのでひとまずそのへんは置いておく。 ここで「知性論」と言われているのは、人間はどうやってモノを認識したり、モノを考えたりしているんでしょうね、その働きはどういうものなんでしょうか、という議論である。それは西洋の哲学的伝統において、霊魂の働きのひとつであると考えられてきた(当然、現代の我々はそういう考え方をしない。知性を脳に還元している。知性の働きを語る際にいつから霊魂という枠組みが必要とされなくなったのか、という別な関心もあるんだが、それについてはTwitter上で こういう教え を授かった)。というか、アリストテレスの哲学の枠組みのなかでそう考えられてきた。 アリストテレスが完璧に「知性とはこういうモノです(試験にでるから覚えておくように!)...