パイドロス (岩波文庫) posted with amazlet at 09.07.30 プラトン 岩波書店 売り上げランキング: 52060 Amazon.co.jp で詳細を見る プラトン強化期間の一環として読む。この対話編は、道でソクラテスとばったり会ったパイドロスが「実はね、ソクラテス。今、リュシアスからすごい話を聞いてきたところなんだよ……」と持ちかけるところから始まる。その話というのが、「人間は恋心を抱いている人ではなく、恋心を抱いていない人間を愛するべきである」というリュシアスの主張を含んだ物語について。本書の前半は、ここから一種の恋愛論といった感じで進められる。 最初、ソクラテスはリュシアス(そしてパイドロス)の主張に同意するかのように話し始めるのだが、ある時点で「あ! やっぱりこれまで言ったことはナシ!」とか言い出して真逆の主張をする――「人間は恋心を抱いている人をこそ、愛さねばならない」という風に。この転身が「ええ……じゃあ、これまでの話ってなんだったの?」という感じでひどいのだが、ひとまずそれは置いといて、ソクラテスは「恋心を抱いている人を愛さねばならない」ということを立証するために、霊魂について語り始める。 この部分が若干ややこしく、うっかりしていると読み飛ばしてしまいそうになるのだが、ソクラテスの世界観(神々と生活と、神々のようには完全ではない人間の生活)などがうかがい知れて大変面白い。 恋は一種の狂気である。しかし、それは神々が作り出した狂気であるがゆえに「善」の性格を持つ狂気であり、また「美を求める」という性格を持つものである(神々が善ではないものを作り出すわけがないのだから)。ゆえに、恋をないがしろにし、恋をしていない人に身を任せることは、善ではないものに身を任せることと同意であろう……云々(ものすごくスピリチュアルな話)。 と言ったことをソクラテスは滔々と語り、その勢いにのまれてパイドロスは回心に至る。さらにここから、ソクラテスがまずはじめにパイドロスに同意するようなことを語り、それから真逆のこと(本当の主張)をし始めた理由について語った理由の説明へと入っていく。そこでは弁論や論述の方法についての議論が行われる。実のところ、前半の恋愛論や、中盤の霊魂論よりも、この後半部分、いわば弁論論(あるいは哲学論)について語られてい...