ジェルジ・リゲティ:≪時計と雲≫ 12人の女声とオーケストラのための カールハインツ・シュトックハウゼン:≪グルッペン≫ 3群のオーケストラのための 指揮:スザンナ・マルッキ(オーケストラII)/パブロ・ヘラス=カサド(オーケストラI)/クレメント・パワー(オーケストラIII) 管弦楽:NHK交響楽団 女声合唱:東京混声合唱団 個人的に今年の夏を締めくくる大イベント、シュトックハウゼンの≪グルッペン≫の生演奏を聴きに行ってきた。これはなかなか刺激的、というか、衝撃的な体験。当ブログでは以前にもこの作品について触れたことがある *1 けれど、やはりYoutubeにあげられている映像や、録音ではまったくその真価が伝わらないとんでもない作品であるなぁ……とド肝を抜かれてしまった。 この≪グルッペン≫という作品が持つ大きな特色として、三つのオーケストラが使用されていて、それらのそれぞれオーケストラは会場の別々な位置に配置される、ということがあげられる。今回の演奏会では作品を、二度演奏し、一度目と二度目で違う場所から聴くことができる、という試みがなされていた。 私は今回、一度目をオーケストラ群に囲まれる中心で聴くことができた。一度目の演奏では、金管楽器や打楽器の咆哮が自分のまわりをぐるぐると回る効果をよく体験できたが、弦楽器などの音があまり聞こえず、また、オーケストラの位置が近すぎて細かい動きについてはほとんど何をやっているのかわからない。三人の指揮者が互いにどういった指示を出し合っているのか、についても、そこからはまったくわからなかった。「たしかにこれは理解不能な音楽の極北と揶揄されても仕方が無いかもしれない」と思ってしまった。 しかし、二度目にオーケストラをすべて俯瞰できる二階席で聴いたところ、かなり印象が違って聞えた。ほとんど別な音楽のように聞えるのである。その位置からは、それぞれの指揮者が担当しているオーケストラが今なにをしているのか、そして相互的にどういう関係で動きあっているのかが把握できるし、弦楽器の音もちゃんと聞える。だが、音に囲まれる、という効果はこの位置では味わうことができない。三つのオーケストラは、三つのオーケストラでなく、ただ単に通常より大きなステージに配置された巨大な一つのオーケストラに聞えてしまう。 二度の演奏を聴き終えて、結局のと...