Giordano Bruno and the Hermetic Tradition (Routledge Classics) posted with amazlet at 11.08.12 Frances Yates Routledge 売り上げランキング: 36713 Amazon.co.jp で詳細を見る 今回は第9章「反魔術 (1)神学的問題 (2)人文主義的伝統(Against Magic (1) Theological Objections (2) The Humanist Tradition)」を見ていきます。前回までは主にルネサンスにおける魔術リヴァイヴァルにどういった背景でおこったかを探っていましたが、16世紀になると魔術に対する警鐘も高まっていったのですね。アグリッパも天使と悪魔を呼び出す大魔術師と言われたり、ピコの甥であったジョヴァンニ・フランチェスコ・ピコは古代神学を異教の偶像崇拝だとし、叔父やフィチーノの魔術を否定しています。反魔術の勢いはカトリックからもプロテスタントからもあがっていたそうです。ローマ教皇、アレクサンドル6世は魔術に寛容で異端審問に引っかかっていたピコを解放するなどしていましたが、彼の考えはまったく支持されていなかったのですね。ここまでが神学的な問題、として整理された反魔術です。 次にイェイツは「人文主義的伝統」の流れでおこる反魔術について整理しています。ここでの人文主義的伝統、という言葉を、ペトラルカを嚆矢として、ラテン語の古典を発掘するムーヴメント、という風に定義します。これは14世紀に始まって15世紀まで続き、15世紀に入ってからのギリシャ語再評価の礎を作ります。イェイツはルネサンスの文芸復興運動を、ラテン語編とギリシャ語編でふたつに分けて考えているのです。 このふたつのムーヴメントは性格からしても違います。ラテン語文献の人文主義者は、年代学にも正確でしたし、文献にも忠実、ペトラルカはすでに高度な文献学的マナーを身につけた人物でした。フィチーノが古代神学のテキストを鵜呑みにしていたのとは、えらい違いです。このふたつはその関心領域も違っている、とイェイツは言います。ラテン語のほうは文学や歴史を主に取り扱い、レトリックや優れた文学に重きを置きました。ギリシャ語のほうは哲学や神学、その他の科学に関心があったようです。前者は...