神秘哲学―ギリシアの部 posted with amazlet at 10.12.30 井筒 俊彦 慶應義塾大学出版会 売り上げランキング: 130301 Amazon.co.jp で詳細を見る 慶應義塾大学出版会よりようやく井筒俊彦の『神秘哲学 ギリシアの部』が復刊されました! ホントはたしか今年の7月に刊行される予定だったんですよね。約半年遅れのリリースの裏側には何があったか分かりませんが、年内に手に入って嬉しい。早速読み始めました……が、これはなかなか手ごわい本でして、ちょっと読みにくいところがあります。何しろ、最初に出版されたのは1949年ですから約半世紀前の格調高い日本語となっており、新かな遣いが採用され、漢字も新字体となっていながらも、おそらくフォントが存在する漢字についてはママとなっていて、見たことがない漢字がちょいちょい出てくる。内容はやはり『意識と本質』を書いた大先生の仕事ですから、おそろしくクリアな整理がされているのですが、こうした表現の問題(?)が21世紀を生きる我々にはちょっとした障害として現れてくる。半世紀後ですらすでにこの有様なのですから、あと少ししたらこうした知的な遺産を読める人の数はどんどん減っていくのではないか? と心配になってきますが、それはまた別な話。今後の日本語教育を考えたい人たちにそうした話はお任せして、ここでは井筒俊彦のテキストを丁寧に読んでまいりましょう。これは井筒の格調高い日本語を、私の格調低い日本語へと翻訳する試みでもあるかもしれません。 さて、本書『神秘哲学』はどういった書物であるのか。副題に「ギリシアの部」とありますが、これは当初井筒が西洋の神秘主義の歴史を書こうとしていた証と考えられているようです。その仕事はその後彼の関心が別な領域へと移ったことによって、この「第一部」である「ギリシアの部」のみが残ることになった、というわけですね。目次から見て行きますと、これは4章立てて構成されたもので、各章はそれぞれ「ソクラテス以前の神秘哲学」、「プラトンの神秘哲学」、「アリストテレスの神秘哲学」、「プロティノスの神秘哲学」と題されています。これが300ページぐらい。本書ではこれに附録として「ギリシアの自然神秘主義」という作品もついてくる。これが200ページぐらい。しかし、なぜ神秘主義なのか。井筒は序文において、この神...