太平洋戦争の歴史 (講談社学術文庫) posted with amazlet at 12.02.29 黒羽 清隆 講談社 売り上げランキング: 147251 Amazon.co.jp で詳細を見る 昨今の情勢を戦争の暗喩で語る表現ほど凡庸で無粋なことはありますまい。しかしながらそれが凡庸である、無粋である、という実感こそが「それ比喩になってねーよ、マジで」というツッコミを呼び起こすのであります。つまり、比喩ではなく直接的な物言いではないですか、と。そんな現状であるからこそ、過去に我が国が総力を持って身を投じた戦争の歴史を参照するのは無駄ではないかもしれない……というのはまったくの後づけです。まあ「戦争の失敗からマネジメントを学ぶ本」(『もしもインパール作戦の前に牟田口中将がドラッカーを読んでいたら』)は普通にありそうですけれど、本書を読んで、太平洋戦争の歴史を振り返っても「リサーチは大事、情報命」、「リスクマネジメントはしっかり」、「収支の見通しを計算しながら事業を進めよう」とかホントに基本的なことしか学べないような気がしました。 タイトルに「太平洋戦争」とありますから先の戦争における中国方面の事情はほとんど省略されています。読んでいて素直に面白いのは前半部分の日本が戦争に至るまでの政局や外交模様、それから南方戦線でバカ勝ちしまくっているところですね。「えー、昭和天皇って結構戦争に乗り気だったんじゃん」とか「日米開戦って誘い込まれるようにして始まってたんだなあ」とか思いましたし(高校時代に日本史を真面目に受けていなかったため、なんか改めて勉強している気分)、開戦直後の快進撃は読んでるだけでアガってしまう。この勝ち方はアレです、パチンコでいきなりジャンジャラと銀玉が出てきてしまったときのアガり方に近い。 そこから後半はテンションが一気に盛り下がり、暗澹たる気持ちになるばかり。本書の記述は前半部分が密度が高く、後半のバカ負けしまくりシーケンスの部分はかなり端折って駆け抜けて行く感じがあるのですが、前半と同じ密度で負けっぷりを描かれたらちょっと東南アジアやグアム、サイパンあたりには恐れ多くて足を踏み入れられなくなりそう。そうでなくても歴史の重さを感じさせてくれます。 著者は敗戦時に国民学校六年生とあり、当時の記憶を自分史として綴っていますが、この部...