Hereafter: Original Motion Picture Score posted with amazlet at 11.02.27 Watertower Music (2010-10-18) 売り上げランキング: 7 Amazon.co.jp で詳細を見る 前作の『インビクタス』に引き続きマット・デイモンを主演に据えたクリント・イーストウッド最新作。なんだか「『グラントリノ』はやはり生前葬だったのか?」と思われるような作品だったと思います――しかし、これはネガティヴなコメントではなく、むしろポジティヴに評価していきたいポイントです。芸術家には三種類の人間がいて、ずーっと同じことをやり続ける人と、どんどんどんどん複雑で巨大なモノを制作していく人と、それとは逆にどんどん作るものをシンプルにしていく人がいる……というのは単なる私見ですが、イーストウッドは前述したなかでは最後のタイプ「どんどんシンプル派」の人に思われてなりません。前作は一言で言えば「ラグビー大好きオジサンのために皆で力をあわせて頑張る!」という話でしたが、今回は「誰の人生でも、なにかが起きて、それですべてが変わってしまうことがある!」という風にまとめることができるでしょうか。 恋人と楽しくバカンスを過ごしていたはずなのに、津波に出くわして死に掛けた(それどころか恋人も仕事も失ってしまった!)。さっきまでは仲良くしていた双子の兄弟が事故で死んでしまった(もしかしたら自分が死んでいたかもしれないのに!)。小さいときに高熱を出して手術をしたら死後の世界がみえるようになった(奇人変人扱いで結婚もできない!)。この映画はこのような、なんの前触れもなく「なにか」に出くわしてしまった人たちの映画なのだと思います。なにが起こるかわからないし、なんだかわからないうちに出来事が決められている。こうした偶有性が映画のなかで強調されているように思われたのですね。例えば、双子のどちらが兄で、どちらが弟か、これもまったく遇有的な事柄で、今回の映画のなかではたまたま兄(言うまでも泣く、先に生まれたほう)が、弟を引っ張るような性格で存在していますが、それは偶々兄として生まれたこどもが、兄的な性格として生まれてきただけのこと、あるいは兄として生まれたことども偶々な兄として育てられただけのこと。仲良し双子の兄弟が、ヘロイン...