栄和人
KADOKAWA (2016-06-09)
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吉田沙保里も立派だったし、自分よりもひとまわり近く年下の「女の子」が次々に金メダルを取っている。みんな、かわいい。かわいいのに強い。で、彼女たちと一緒に喜んでる、あのスキンヘッドのコーチっぽい人、こと、栄和人氏のことも気になったのだった。これだけ選手を成功させ(続け)るには、よっぽど良いマネジメント能力があるにちがいない、と。本書には、日本レスリング協会の強化本部長である栄氏が明かす、成功の秘訣が収められている。
「指導者にとって不可欠なことは?」という問いに対して筆者は、次の3点をあげている。
一つ目は、選手一人一人について、強くなるために何が必要かが見えていること。このうち、わたしが「おお……」と思ったのが、3点目の指導者も変化・進化を続けていくこと。「オレ流の指導」を貫き通すのではなく、 時代や選手に合わせて、ベターな指導方法があったら、そっちに方向性を変えていくのを厭わない。選手が変化していくのは、まぁ、よく聞く話だけれども、指導者がどんどんスタイルを変えていく、っていうのは意外で。
二つ目は、具体的な言葉で励ましながら、「勝つこと」の意識づけをすること。
三つ目は、自分のやり方に固執せず、変化・進化し続けていくこと。
だって、大変じゃないですか。指導者、と言えば、人間としてもキャリアを積んできて、つまり、そこそこ年をとっているわけで、そういう人が自分を変える、って選手が変わる以上に大変なんじゃないのか、と。でも、選手を強くするには、著者は変化を厭わない。むしろ、強くすることだけを考えていれば、自ずと、自分も変わっていくのだ、という。これが、素晴らしいな、と思いました。なんというか、現在のレスリング女子日本代表の成功は、才能ある選手の存在と、この指導者のゴールデン・タイムがうまく噛み合った結果なのかな、と思う。
あと、「勝つこと」の意識づけの部分。本書を読むと、筆者がいかに選手のコンディション・コントロールに労力を割いているかが理解出来る。身体的なコンディションだけでなく、メンタルのコンディションまで実によく見てケアしている。試合に集中させるように環境を作り、雰囲気をよく保つためにチームを作らせる。テレビで結果だけを見ているとレスリング女子日本代表はまるで「常勝軍団」のようだけれど、実はそうではない。世界のトップ選手のレベルはギリギリの闘いだ、ということが本書から伝わってくる。「霊長類最強女子」と言われた吉田選手もギリギリ。
だからこそ、最後は「気持ち」や「意識」なのだ、という。なんか、こうして書いてしまうと、陳腐な教えに思えてしまうのだが、すごく説得力あるんだよね、この本の書きぶりだと。ポイントポイントで吉田選手の語りも挿入されていて、選手として、そうしたコントロールをされて、どういう良い結果につながったか、が明らかにされているのも良かった。
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