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都響VSのだめ




のだめカンタービレ (3)
二ノ宮知子
講談社
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 世界で一番プロ・オーケストラが多い都市は実のところ東京都。思いつく限りあげてみると10団体ぐらいあって、すげーなぁ、と思う。そのなかでも私が応援しているオケは東京都交響楽団*1で、このオケは『のだめカンタービレ』オフィシャル・サポーティング・オーケストラとなっており、ドラマの収録などにも参加していたことでクラシックに馴染みのない方でも気がつかないうちに目にしていることがあるはずだ(ちなみにマンガの監修を務めている茂木大輔はNHK交響楽団)。


 少し先の話になってしまうのだが、その都響が「都響×のだめカンタービレ シンフォニック・コンサート」という企画をやるそうだ。曲目はベルリオーズ《ローマの謝肉祭》、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番、ブラームスの交響曲第1番、と全て作中に登場した作品を取り上げている。よく考えたらのだめってオケと一緒にラフマニノフ弾いてないじゃん!とか思うのだが、コンサートのヴォリューム的には普通よりもちょっと多いぐらいでお得感がある。別に都響の団員の知り合いがいるわけでもなんでもないのだが、これは是非足を運んで欲しいコンサートだと思う。


 「クラシック・ブームが来ている」といわれている昨今だけれども、オーケストラ運営の実情は結構厳しい。都響をめぐる状況にもこんな話がある。リンク先の記事をかいつまんで説明すると「都響が都の財政のお荷物になってるんで補助金減らして、団員もリストラします。全員契約団員ってことで」と言う感じ。この提案には「3年ごとに団員審査なんかやってたら、落ち着いて音楽なんかできるか!」と反対の声は各方面から上がっていたのだが、既に2005年から導入されている(石原都知事も文化人出身の割に暴力的なことをするものだ)。まぁ、都響も色々と苦労しているわけだ。


 でも、そういう厳しい状況だからこそ、オーケストラには頑張って欲しい、と個人的には思っている。ブームのおかげでチケットの売り上げは普段より伸びているそうだけれど、さらにもう一踏ん張りしてブームの次につなげて欲しいものだ。今度も「のだめコンサート」も1つの勝負のしどころ。マンガに描かれた感動を乗り越えるような演奏が望まれる――ほんと、初めてコンサート来た観客を失禁させるぐらいの勢いがないとダメだ。



ブラームス:交響曲第1番
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 予習には、シャルル・ミュンシュ/パリ管弦楽団の熱演を。プレイ・ラウド!




*1:通称・都響。他のオーケストラと比べて企画コンサートに面白いものが多く、また最も学割の割引率が高い。50%オフは驚異的





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