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読売日本交響楽団第498回定期演奏会 @サントリーホール 大ホール




指揮:シルヴァン・カンブルラン


ヴァイオリン:ヴィヴィアン・ハーグナー


《3つの〈ペレアスとメリザンド〉》


ドビュッシー(コンスタン編曲)/〈ペレアスとメリザンド〉交響曲


コルンゴルト/ヴァイオリン協奏曲


《マーラー・イヤー・プログラム》


マーラー(ブリテン編曲)/野の花々が私に語ること(原曲:交響曲第3番 第2楽章)


シューマン/交響曲第4番(第1稿)



 11月の読響定期は常任指揮者、シルヴァン・カンブルランが3度目の登場。「3つの《ペレアスとメリザンド》」シリーズの最後を飾るドビュッシーや、マーラーがフューチャーされたプログラム。シーズン後半に入ってからパッとした演奏がなく「来年の定期会員はどうしようかなぁ」と悩んでいたのですが、今日はとても良い演奏会で「また来年も会員になろう!」と思いました。良い演奏に触れると、また明日から仕事を頑張ろう! と気分がリフレッシュします。とはいえ、そう思えたのは後半のプログラムが良かったからなのですが。





 プログラム順に振り返ってみますと、ドビュッシー。これは今季の前プロでは前回の《未完成》に次いで良い演奏だと思いました。管楽器のアンサンブルの難しげなところが雑だったのが少し残念でしたが、弦楽器の柔らかい音色が気持ち良く、まろ~い感じ。で、その次のコルンゴルト。これは端的に言ってヒドかった。今季で一番酷い演奏だった気がします。この作品は、ソリストの超絶技巧が要求される協奏曲として名高いもので、そういった曲を任されるソリストなのだから、さぞすごいテクニシャンなのであろ~、と期待していたのですが、もう全然ダメ。音が全部並んでないし、音は飛んでないし……。伴奏のオケもゴチャゴチャしてて聴くに耐えませんでした。演奏後、ソリストにアンコールを求めるような拍手が長々と続きましたが、こういう演奏にアンコールを求めちゃいけないと思います。





 このコルンゴルトのあとの休憩で「来年の定期会員はどうしようかなあ」という悩みは最高潮に達し、知らない人(隣の席に座っている定期会員の紳士)に「今の演奏、どう思いますぅ?」と絡みたくなるほどだったんですが、後半のマーラーからどんどんオーケストラが良くなっていきました。カンブルランという指揮者がどういう人なのか、つかみきれているとは言えないのですが、マーラーの交響曲第3番からの抜粋は聴衆が「オッ」と思うポイントを押さえた効果的な演奏でした。本日のコンサートマスターの藤原さんのソロも良かったです。私はこの人の細かいヴィブラートのかけ方が苦手だったんですが、今日はなんか普通な感じだったから好印象だったのかもしれません。抜粋版だけじゃなくて全部聴かせてくれ~、思いました。





 で、ラストのシューマン。これは間違いなく今季ベスト。交響曲第4番の初稿版は初めて聴きましたが、広く演奏されている改訂版とはまったく印象が違うのも驚きました。ブラームスは改訂前後を比較して「初稿のほうが軽やかで良い」と評価したそうですが、確かに初稿版は序奏のテンポから違う(これは指揮者の設定なのかな)。オーケストレーションも初稿版のほうがムチャクチャな感じがして、言ってしまえばよりシューマンらしく聞こえるような気がします。良いですね~、シューマン。管楽器がブ厚く使用されている部分は、まったく効果的に楽器が使われておらず、モヤモヤしていてなにがなにを吹いているのか分からない。このモヤモヤを背景にして、第一ヴァイオリンが一生懸命キリキリと働く……というこの風景がシューマンっぽい。なんだかモヤモヤな管楽器は、音楽がなんとな~く立派に聞こえるように裏側に鉛をくっつけてみました、的な効果を放っているようにも思われ、これを無理にキレイに音を整理して鳴らさなくとも、っていうか、キレイに鳴らさないからこそ、シューマンらしい魅力が放たれるのではないか、とも思われるのでした。つまり、カンブルランのシューマンはそういうものであったわけですが、しかし、こうした演奏が鈍重に聴こえなかったのは、軽やかなテンポ設定や、細やかな表情のつけ方がとても上手かったからでしょう。





 ただ、シューマンの音楽はずーっとモヤモヤが背景にいるわけじゃなくて、急に音がスカスカになる瞬間もやってきて、そういうところが面白いんですよね~。ほとんど丸裸でバス・トロンボーン(かな?)が低音をフォルテで吹く箇所なんか、なんだ、その楽器の使い方は! とビックリしてしまいます。ちなみにこのトロンボーンの部分は「カンブルランの指示に、変な箇所を強調する意図があったのかな」と推測してしまうぐらい強調されていました。なんだか演奏を褒めてるのか貶しているのかよく分からなくなってきましたけれど、集中力・テンションともに途切れない極めて良い演奏でした。自然と目頭が熱くなりましたよ。





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