ロバート・L. ウォルク
楽工社
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たとえば、塩について扱っている部分。著者は「挽いた瞬間に揮発性の高い香りの成分が飛ぶコショウとちがって、塩は挽きたても、挽いてから時間が経っていても、基本的には同じもの。味に変化はないハズ」というようなことを書いている。「へぇ、そうなんだ〜」と多くの人は思うだろうけれど、でも、挽きたての塩のほうが「ありがたい」と感じる気持ちは変わらないんじゃないか。つまり、化学的には同じ物質であっても、挽きたての塩と、そうでない塩は、別なものとして我々の感覚を刺激するのである。
そういう意味で、本書における化学的な説明は、料理の文化的な側面にまったく触れずに、そのまったく触れないものを際立たせているように思われる。我々は化学的に説明可能な物質を食べているのではなく、化学では証明できない意味を食べているんだな、とか思うんだよ……とやや批判的な調子で、本書を紹介したが、へー、みたいなトリヴィア知識は満載で、とても勉強になった。これまで勝手に思い込んできた誤解が解ける記述(赤身の肉の赤は、血の赤じゃない! とか)もたくさんある。化学の知識がなくても全然読める。
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