日頃お説教を食らうのは嫌いだけれども、お説教じみた本っていうのは存外に好きらしい。伊丹十三のエッセイしかり、池波正太郎の『男の作法』しかり。
タイトルに「男」とあるけれども、これは池波正太郎が「大人の人間というのはどうあるべきか」的なことを質問に対してあれこれ答えたものなので、必ずしも「男のための本」ではない。昔の飛行機のなかは新婚旅行にいくカップルがペッティングしまくっていてヒドかった、みたいなホントかよ、という話もあって大変に面白い本である。「将来の自分を高めていくための何かほかのものにふり向けてやっている人と、放縦に踊り狂ってセックスしたりしている人との差は、必ず数年のうちに出てきちゃう」など金言満載。
なかでもわたしが気に入ったのは「とにかく大学を終わって社会へ出るまでの若い時代に、いろんなものに首を突っ込んでおくことですよ」という言葉。社会に出るまで、絵だの音楽だの読書だの、いろんなことが好きになっておくと「そういうものが多ければ多いほど、街を歩いていても、どこへ行っても、本屋なりデパートなりで容易に気分転換ができるわけだろう」というわけだ。
これはね、身につまされる、というか(もちろん大変なこともあるけれども)本屋なり、レコード屋なりで、パッと気分が晴れてしまう生活を送っておるから、なんというか、池波正太郎に褒められたような気分になった。
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