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最近買って良かったなぁ、と思った旧譜




Original Album Classics
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posted with amazlet at 10.07.06
Weather Report
Columbia/Legacy Euro (2010-04-23)
売り上げランキング: 1840



 しばらく前からタワレコの店頭で見かけていたんですが、コロムビア系のロック/フュージョン系ミュージシャンのオリジナル・アルバムが5枚組セットで、オリジナルアルバムの紙ジャケを再現しつつ2500円(一枚500円!)というシリーズが出ているようです。この前、たまたま猛烈にフュージョンが聴きたくなってそのうちのウェザー・リポートの五枚組を買ったのですが、これが良かった。私にとってウェザー・リポートとは「ベースがジャコパスで……」という感じのイメージで決まっていたのですが――つまり『Heavy Weather』しか聴いてなかったってこと――このセットに収録されてる『Heavy Weather』以前のアルバムのほうが、今の私のセンスにはあう。っつーか、最高。どう考えてもウェザー・リポートは、ファンクビートを導入する以前の、電化マイルスバンドから分家してきた時期の演奏が刺激的で良いです。特に『I Sing the Body Electric』に収録されている「Direction」(ライヴ音源)なんか、同時期のマイルス・バンドの(ブート)音源よりもはるかにスマートでカッコ良い。ジョー・ザヴィヌルが70年代マイルスに残した深い深い影響を考えるうえでもこのセットはお買い得だと思いました。



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Original Album Classics
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John McLaughlin
Columbia/Legacy Euro (2010-04-23)
売り上げランキング: 10360



 同じ廉価盤シリーズのジョン・マクラフリンのものも買いました。これもすごかった。表向きジョン・マクラフリンのセットということになっているけれど、5枚中3枚はジョン・マクラフリンがマハヴィシュヌ・オーケストラを解散した後に結成したシャクティというインド音楽オリエンテッド・ジャズ・ロックなバンドの音源、そのほかはそういうエキゾチックなフュージョンのソロ・アルバムという組み合わせなんですが、このシャクティの音源がヤバい。なんといってもタブラがザキール・フセイン(人間国宝)。インディアン・ドリルンベースという表現が冗談じゃないほどにミチミチにつまったビートに笑いが止まらなくなります。



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 まぁ、こうしてみるとジョン・マクラフリンなんかエキゾチックなものにハマってしまった、やや痛いガイジンなのかもしれないけれど、ときおりブリティッシュ・フォークな雰囲気を漂わせたりするものだから目が離せないのです。共鳴弦(?)付の変形アコギにこだわってるのも、やっぱり全部インドにはハマらないぞ、という矜持な気がする。だって、ホントにインド音楽がやりたいならシタールに乗り換えてると思うもん。





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