トマス ピンチョン
新潮社
売り上げランキング: 44,714
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視点は、主人公の私立探偵、ドックから動かないし、序盤ちょっとダラダラしてないか? いつになったらバカ博物学描写がでてくるんだ? 「どうなんだ、これは……」とページをめくっていくうちに、登場人物はどんどん増えてきて、バカな脱線(聖書に登場する湖上を歩くイエスをサーフィンの暗喩と解釈する伝説のサーファーとか)やニューエイジ思想やオカルティズム(『逆光』にはシャンバラ帝国がでてきたが、今回はエミリア大陸!)、そして映画やテレビドラマ、サイケロックやサーフミュージックといったサブカルチャーの記述が満載になり、安定のピンチョン・クオリティで思わずガッツ・ポーズである。
この小説、とくに終盤からの伏線回収モードに入ってからがスゴい。「こんなに急いじゃって良いんですか……?」とどんどん伏線が回収されて、どうでも良い脱線だと思われてきた記述さえも重要なシーンに「あれ、伏線だったんかい!」と登場する。ピンチョンの作品中、もっともそのミステリーが解かれていく快楽が高いものではなかろうか。で、また、ちょっとジーンとさせる要素をいれてくるんだよね。この小説の世界ともつながりを持っている『ヴァインランド』以降、なぜかピンチョンは必ずジーンとくるシーンを書いている。しかも、きまって家族愛だっていう。ちょっと最高すぎ。
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