生涯を語ることの不可能性

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トリストラム・シャンディ 下    岩波文庫 赤 212-3
ロレンス・スターン 朱牟田 夏雄
岩波書店
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 結局最後までトリストラム・シャンディの生涯はほとんど語られることなく小説は閉じられる(しかもダジャレ……)。そこで、語り手が自分の生涯を語りつくすことってそもそも不可能だよなぁ、とハッと気がついた。「人間主体は死をもって即自存在へと完成させられる」…と実存主義的な言葉を持ち出すまでもなく、語り手がそこで生きている、という事実は語っている間にも、語るべき「生涯」が生産されているというわけで、語り手が自分自身の生涯を語りつくすことは永久に不可能なわけである。


 でも、別にそういうことは一切小説には書いていなくて、相変わらず脱線ばかりが繰り広げられるばかりだ。読んでいる自分が馬鹿みたい思えてくる小説には違いない。


 こういう変な小説が読めるのは、幸せだ。





2 件のコメント :

  1. はじめまして。
    ところで、マイケル・ナイマンがトリストラム・シャンディに基づいたオペラを計画していたのはご存知でしょうか?
    残念ながら(というか当然?)オペラは未完ですが。
    アルバム「The Kiss and Other Movements」の中の「Nose-List Song」の解説を参照ください。
    http://www.michaelnyman.com/disco/10

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  2. いやー、知りませんでした。というか、ナイマン自体あまり知らなくて……。所謂「ミニマルの人」はライヒのいくつか以外ほとんど聴いておりません。しかし、スターンが書いた脱線につぐ脱線は、ミニマルとの相性は良いのかもしれませんね。フラグメントしかないもの同士をつなぐ、というか。

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