「ありそうになさ」の過剰

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トリストラム・シャンディ 上 (1)
ロレンス・スターン 朱牟田 夏雄
岩波書店
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 今月下旬にディドロの『運命論者ジャックとその主人』(どうやら新訳)が刊行されるそうなので、その前に『トリストラム・シャンディ』を。ルーマンの『社会の芸術』に言及されたものが短いスパンで復刊されたり、新訳がでたりしているので日本の出版会でトライステロみたいな秘密結社が暗躍しているのではないか……と疑いたくなる。次はハインリヒ・コルネリウス・アグリッパ*1(ネッテスハイムのアグリッパ)の『隠秘哲学』あたりを……*2


 評判どうりとんでもない小説である。原題は"The Life and Opinions of Tristram Shandy, Gentleman"、紳士トリストラム・シャンディの生涯と意見。なのに300ページ過ぎないとトリストラム・シャンディは生まれてさえおらず「ストーリーってこういうものだよな」という型を、解体するような脱線、脱線、脱線の嵐。あまりにストーリーになっていないストーリーの「ありそうになさ」が過剰すぎて、読んでいて笑いが止まらなかった。物語の途中に「序文」が挿入されたりとめちゃくちゃである。この部分、物語の内部と外部さえも既にあやふやとなっていて非常に面白い。一応トリストラム・シャンディの自伝のような形をとっているのだが「序文」は作者の手によるものとして書かれている。「語り手は誰か?」、「作者は誰か?」とか「じゃあ、ここまではメタフィクションだったのか?」みたいな部分に疑問が湧く。そういうのが曖昧なまま、語りは続き、気がつくとまた変なところに連れて行かれている…というサイケな感じがたまらなく良い。


 最近はこういう無茶苦茶に過剰なものがツボで、変なものばかり読みたいような気がします。続きが楽しみ。




*1:っつーかなんでこんなのキーワード化されてんだよ!


*2:とか思ってたら既に出る予定あるみたい。http://getsuyosha.jp/kikan/brehier01.html





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