スキップしてメイン コンテンツに移動

カールハインツ・シュトックハウゼン《グルッペン》




D



D



D


 Youtubeを観ていたらカールハインツ・シュトックハウゼンの《グルッペン》の映像が見つかった。こちらは3つのオーケストラを使用して、音を塊として操作する……云々というトーンクラスター技法の先駆けにもなった、と評される作品である(確か近藤譲があまりの難解さに『現代音楽はもう終わった』みたいな発言をしていた気がする)。とにかくギネス級の規模の大きさであるが、こちらの演奏は3つのオケを指揮する3人のメンツがすごい。サイモン・ラトル、ジョン・カレヴェ、そしてダニエル・ハーディング……と横綱みたいな人たちが揃っている(1998年の演奏、ダニエル・ハーディングが美青年過ぎてやばい。当時まだ23歳!)。


 この作品をBBCフィルハーモニックを今年演奏していて、それを生で聴いた友人から話を聞いたのだが、演奏会場で聴くと(視覚的にも)かなりすごいらしく、会場のロイヤル・アルバート・ホールのアリーナ席にもオケが一杯配置されていて、マリンバ奏者の隣にお客さんがいる……みたいな感じらしい。この映像でも観ていて相当すごいのだがやはりモノラルの音源では作品の内容は10分の1も伝わらない気がする。もうすぐシュトックハウゼンが亡くなって1年が経とうとしているが、日本でも演奏される機会がないかなぁ、と思う。



Stockhausen: Gruppen; Kurtág: Grabstein Fur Stephan Stele

Deutsche Grammophon (2008-09-30)
売り上げランキング: 197333



 録音ではこちらのクラウディオ・アバドの演奏が有名だが、近年はもっと良い演奏がある、とのこと(たしかミヒャエル・ギーレンが指揮したものだったか……?)。DVDオーディオだのSACDだの最近では高音質・多チャンネルで再生可能なメディアがいろいろあるけれども、本当のところ、こういうものこそ録音して欲しいなぁ、と思う。まだ、多チャンネルでの再生環境を持ってないけれど……。





コメント

  1. SWRは少なくともシュトックハウゼンの生前にグルッペンをプロダクションしています。
    最初のは作曲者とブーレーズ、2回目はギー連夜タマヨらとですね。
    エトヴェシュもいるのかな?

    これをラッヘンマンは傑作と読んでいますが、
    日本の芸大アカデミーの管弦楽法から言うとめちゃくちゃなオーケストレーションですね。
    セリリルの考え方が残っているのでフルートは低音でも出ても出なくともfffが必要なら使う、
    トランペットは高音域でも出ても出なくともpppが必要なら使う。
    マイコンなら真っ先に落とされる作風ですね。
    でも尾高賞で「グルッペン」より生き残って研究された音楽はまだでていないですね。
    下b台音楽とはこういうものですね。

    返信削除
  2. コメントありがとうございます。最新録音はエトヴェシュだった気がしてきました。作曲コンクールの選考基準がどのようなものか存じ上げませんので、なんとも言いがたいのですが「めちゃくちゃなオーケストレーション」で「落とされる作風」でも面白いなら良いんじゃないの?と個人的には思っています。私の貧しい耳では、それが正しい音なのか、聞き分けはできません。

    返信削除
  3. 起きるのが早いですね。
    こちらはこれから寝ます。
    エトヴェシュは再来週ケルンに来るでしょう。
    また会いにいってみましょうか。

    返信削除
  4. 来年のサントリーサマーフェスティバルでやる、と予告
    (どうなるかわかったもんじゃありませんが)がありましたよ。
    サントリーホールなんで、どう配置させるか・・・左右オケは客席!?

    返信削除
  5. 客席ですかねぇ……。予想がつきません。ステージの脇は結構角度があったと思うので、オケなんか乗るのかな。

    返信削除
  6. ウイーンのムジーク・フェラインはアバドは客席を取ってやったようですね。

    返信削除

コメントを投稿

このブログの人気の投稿

石野卓球・野田努 『テクノボン』

テクノボン posted with amazlet at 11.05.05 石野 卓球 野田 努 JICC出版局 売り上げランキング: 100028 Amazon.co.jp で詳細を見る 石野卓球と野田努による対談形式で編まれたテクノ史。石野卓球の名前を見た瞬間、「あ、ふざけた本ですか」と勘ぐったのだが意外や意外、これが大名著であって驚いた。部分的にはまるでギリシャ哲学の対話篇のごとき深さ。出版年は1993年とかなり古い本ではあるが未だに読む価値を感じる本だった。といっても私はクラブ・ミュージックに対してほとんど門外漢と言っても良い。それだけにテクノについて語られた時に、ゴッド・ファーザー的な存在としてカールハインツ・シュトックハウゼンや、クラフトワークが置かれるのに違和感を感じていた。シュトックハウゼンもクラフトワークも「テクノ」として紹介されて聴いた音楽とまるで違ったものだったから。 本書はこうした疑問にも応えてくれるものだし、また、テクノとテクノ・ポップの距離についても教えてくれる。そもそも、テクノという言葉が広く流通する以前からリアルタイムでこの音楽を聴いてきた2人の語りに魅力がある。テクノ史もやや複雑で、電子音楽の流れを組むものや、パンクやニューウェーヴといったムーヴメントのなかから生まれたもの、あるいはデトロイトのように特殊な社会状況から生まれたものもある。こうした複数の流れの見通しが立つのはリスナーとしてありがたい。 それに今日ではYoutubeという《サブテクスト》がある。『テクノボン』を片手に検索をかけていくと、どんどん世界が広がっていくのが楽しかった。なかでも衝撃的だったのはDAF。リエゾン・ダンジュルースが大好きな私であるから、これがハマるのは当然な気もするけれど、今すぐ中古盤屋とかに駆け込みたくなる衝動に駆られる音。私の耳は、最近の音楽にはまったくハマれない可哀想な耳になってしまったようなので、こうした方面に新たなステップを踏み出して行きたくなる。 あと、カール・クレイグって名前だけは聞いたことあったけど、超カッコ良い~、と思った。学生時代、ニューウェーヴ大好きなヤツは周りにいたけれど、こういうのを聴いている人はいなかった。そういう友人と出会ってたら、今とは随分聴いている音楽が違っただろうなぁ、というほどに、カール・クレイグの音は自分のツ...

2011年7月17日に開催されるクラブイベント「現代音楽講習会 今夜はまるごとシュトックハウゼン」のフライヤーができました

フライヤーは ナナタさん に依頼しました。来月、都内の現代音楽関連のイベントで配ったりすると思います。もらってあげてください。 イベント詳細「夜の現代音楽講習会 今夜はまるごとシュトックハウゼン」

リヒテル――間違いだらけの天才

 スヴャトスラフ・リヒテルは不思議なピアニストだ。初めて彼のピアノを友達の家で聴いたとき、スタインウェイの頑丈なピアノですらもブッ壊してしまうんじゃないかと心配になるぐらい強烈なタッチとメトロノームの数字を間違えてしまったような速いテンポで曲を弾ききってしまう演奏に「荒野を時速150キロメートルで疾走するブルドーザーみたいだな」と率直な感想を持った。そういう暴力的とさえ言える面があるかと思えば、深呼吸するみたいに音と音の間をたっぷりとり、深く瞑想的な世界を作りあげるときもある。そのときのリヒテルの演奏には、ピンと張り詰めた緊張感があり、なんとなくスピーカーの前で正座したくなるような感覚におそわれる。  「荒々しさと静謐さがパラノイアックに共存している」とでも言うんだろうか。彼が弾くブラームスの《インテルメッツォ》も「間奏曲」というには速すぎるテンポで弾いているけれど、雑さが一切ない不思議な演奏。テンポは速いのに緊張感があるせいかとても長く感じられ、時間感覚をねじまげられてしまったみたいに思えてくる。かなり「個性的」な演奏。でも「ああ、こんな風に演奏しても良いのか……」と説得されてしまう。リヒテルの強烈な個性の前に、他のピアニストの印象なんて吹き飛んでしまいそうになる。  気がついたら好きなピアニストの一番にリヒテルあげるようになってしまっていた。個性的な人に惹かれてしまう。こういうのは健康的な趣味だと思うけど、自分でピアノを弾いている人の前で「リヒテル好きなんだよね」というと「あーあ、なるほどね」と妙に納得されるような、変な顔をされることがあるので注意。 スクリャービン&プロコフィエフ posted with amazlet on 06.09.13 リヒテル(スビャトスラフ) スクリャービン プロコフィエフ ユニバーサルクラシック (1994/05/25) 売り上げランキング: 5,192 Amazon.co.jp で詳細を見る  リヒテルという人は、ピアニストとしてだけ語るには勿体無いぐらいおかしな逸話にまみれている。ピアノ演奏もさることながら、人間としても「分裂的」っていうか、ほとんど病気みたいな人なのだ(それが天才の証なのかもしれないけれど)。「ピアノを弾くとき以外はロブスターの模型をかたときも手放さない」だとか「飛行機が嫌いすぎて、ロシア全...