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特発性過眠症と診断されるまでの話(1)

二ヶ月に一度ぐらいのペースで精神科に通っている、といっても鬱であるとか、治療をしないとガッツリ生活に支障がでる病気の治療のためではなく、特発性過眠症の症状を改善するための薬をいただくためである。病名だけみると飛んでもなく恐ろしげで「そのまま眠り続けて死ぬ」ような病気でもおかしくなさそうだが、そんなわけでもなく、一日八時間ぐらいたっぷり睡眠をとっても突然昼間眠くて仕方なくなり、我慢とかそういうレベルではなく、ふっとした瞬間に眠ってしまう、という病気なんだか、体質なんだかよくわからない感じ。似た病気としてナルコレプシーという有名なモノがあるけれど、そこから情動発作の症状を抜いたもの、というのが私の場合であって同じ病名でも分類が微妙に異なったりして「理由は分かっていないが、寝てても昼間眠くて仕方なくなっちゃう人たち」にこの病名が与えられるっぽい。

そんな症状は中学生時代からあった。でも、当時から深夜ラジオを聴きながら受験勉強だとか読書だとかをしていたものだから、単なる寝不足だと思っていたし、先生にはいろいろ言われるけれども、そこそこ勉強ができたものだから授業が聞けなくても自分で勉強すればなんとなったりして支障はなかったわけ。それが問題になりはじめたのは仕事をはじめてから。環境の変化が影響したのかも知れないけど、この頃から日中の眠気のほかに、金縛りを頻発するなど今考えたらいろんな兆候はあったのだ。ただ、私が従事しているのは、運転手だとか接客業だとかと違い、仕事中に寝てても根本的に/致命的に支障はない仕事(システム開発)であり & 職場の雰囲気のユルさに助けられ、午前中から寝ててもなんとなく放置されていた。もちろん、そこでも学生時代と同様に注意してくれる人がいたし、たぶん「あ、コイツ、ダメなヤツなんだな。居眠りばっかりしやがって」という評価のされ方をしていたんだと思う。

「だって眠いんだもん、仕方ないじゃん。寝ても眠いし、どうしようもないわい」と内心逆ギレしつつ、人の目を気にしない & 空気の読まなさを発揮しまくり続けて、幾星霜。仕事の内容に問題があったわけではなかった(たぶん)ため、会社もクビになることなく、いつの間にか結婚したりして「このまま、なんか毎日居眠りして会社に居続けるのかなあ」などとぼんやり考えていた矢先、妻から「あのさ、寝てるときに呼吸が止まってるときあるんだけど」と言われ、え、マジで!? 俺、睡眠時無呼吸症候群ってヤツなの!? 俺、太ってないけど?? とビックリしたのが、いろいろと病院で検査を受けるきっかけとなった。

睡眠時無呼吸症候群の検査

いろんな事故が起きたおかげで一躍有名になったこの病気。知名度が高いおかげか、いろんなところで検査を受けさせてもらえる。検査ができるところはこのサイトで調べて最寄りのところへGO。

私の場合は、お医者さんと軽く話したら(「妻から寝ているときに呼吸が止まっていると言われて」など)検査をすることになった。その病院でおこなえたのは簡易検査だったんだけれども、残念ながら検査用の機械が常備されているわけではなく「はい、じゃあ、検査するので、ここに寝てください」というスムーズな感じではない。その検査をサービスとしておこなっている会社から機材が届いて、自宅でそれを使って検査をおこない、計測したデータを機械ごとその会社に送り、解析結果がお医者さんのところに届く、という流れ。なので、その会社の営業の人と電話して、いつ機材が届くのか、みたいな調整をしたりした。

しばらくしたら宅急便でこんなブツが届く。

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中身。

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未来っぽい装着イメージ。

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こういうアンケートも書く。

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検査は一晩。上手くデータがとれていないときは、再テストにもなるらしい。検査費用はいくらだったかな……。忘れてしまったが、そんなに高くなかったハズ。一週間か二週間したら病院から「検査結果がでたので都合が良いときにきてください」と電話があって、病院へいくと先生からデータをみながら「うーん、呼吸、してますね。全然無呼吸症候群じゃなかったですよ」と伝えられた。なーんだ、良かった、と思っていたのはつかの間、次に先生から「でも、昼間眠いし、寝ちゃうんですよね〜。それ、ナルコレプシーかもしれないですね、でもここじゃ検査ができないので、もし引き続き調べたいなら検査できる大学病院への紹介状書きますから」と言われる。

「じゃあ、お願いします」とトントン拍子で、次のステージへ(続く……)。

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