スティーヴ・エリクソン Steve Erickson 柴田元幸
白水社
売り上げランキング: 3,811
あざけり先生とメッセをしていてふと現代作家の話になり、そこで「面白いよ、エリクソン*1」と教えられて気になっていた作家、スティーヴ・エリクソン。「うわぁ…、こんなとんでもない作家がいるのか……。アメリカってすげぇなぁ」などと既に読んでいる人をうらやましく思うぐらい面白かったです(『面白いものを自分より先に知っている人』に対して悔しいなぁ、とか思う。何故だか説明できないけど)。
何人かの登場人物の話が複雑に絡み合って一つの物語を構築しているので「ストーリー」を説明するのはひどく難しい。あらすじから引いてみるなら「もし、第二次世界大戦でドイツが負けていなくて、ヒトラーが生きていたら……」ということになるけど、これもなんとなく違う気がする。それだけ抜粋してみると恐ろしく荒唐無稽な話に見えてしまう。実際読んでみると確かにその「あらすじ」で合っているような気もするんだけど、「荒唐無稽なんだけど、笑い飛ばせない。むしろものすごく立派なものを読んだ気になってしまう」という不思議な読後感。いや、なんか現代の小説を読んでいて「やっぱり《脱臼》させるしか、小説の技法はないんじゃないの?」などと漠然と考えていましたが「こうも書けるのか!」という衝撃がありました。「荒唐無稽だけど、マジメ。で、すごい立派」っていうのが斬新。
読み終わって頭に浮かんだのがゲーテの『ファウスト』だったんだけど、ちょっと遠すぎるかもしれない。でもテーマの重厚さ、登場人物の「人間っぽさ」っていうのは遠いロマン派のそれと似たところが確かにあるのだと思います。「ポスト・モダンの衣を纏った叙情作家」っていうのはあながち間違いではない気もする。もちろんあとがきで訳者の柴田元幸が書いている「魂のポストモダニスト」というのもすごく共感できる言葉。
エリクソンは「エックスのアーチ」を読んでる。読むのに凄いパワーがいる
返信削除