ウンベルト・ヂ・モライスの新譜を聴く。なんでも「日本ではこれまでほとんど知られていなかったSSW」だそうで、ジャケットもカッコ良いし、長いこと気になっていたのだった。彼の詳しい経歴はこちらのサイトで読める。ディスクユニオンでは「ミナス系」という形で紹介されているが(CDもミナス・コーナーにあった)、7歳のときにリオデジャネイロに移住とあるので、その位置づけはよくわからないが、ブラジルではエコノミストの仕事をしながら長いこと音楽活動を続けていた、という異色の経歴の人である(現在は大食して音楽に専念)。たしかに歌声にはミルトン・ナシメントを彷彿とさせる響きを感じたりもするし、モライスと同じくミナス出身のミュージシャンがレコーディングには参加しているし、音のしっとり感、ジャジーな雰囲気はミナス的である。
ミナスジェライスといえば、アントニオ・ロウレイロやクリストフ・シルヴァなどに注目が集まっているが、モライスの音楽は、もちろん、そうした若い世代のミュージシャンの音楽とはまるで違っている。「新しい音楽」とは決して言えない。けれども、こういう円熟、というか、渋みは「新しい音楽」には決して聴き取れない性質のものだろう。激シブなバラードの沁み具合は、ドリヴァル・カイミみたいでとても深い。クリストーヴァン・バストスとトゥーリオ・モウラォンによるアレンジも素晴らしい仕上がりで、アコースティックな夜のブラジル音楽が聴きたければ、大変オススメしたい一枚である。
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