『酒場詩人の流儀』は彼が地方紙で連載していたコラムを纏めていたもので、これまた吉田類という人間の魅力の別な一面にスポットが当てられている本であった。タイトルは「酒場ではこういう振る舞いがふさわしい」だとか「この店がマイウーである」だとか、そういうことを語っていそうな雰囲気だが、山歩きや渓流釣りといったネイチャー系の趣味が多いに語られ、酒場詩人が酒場を飛び出して、自然を肴に酒を飲むようなお話が続いている。また、教養もスゴいんですよね。この人は高知の生まれで「お、出なすったな、酒飲み県民!」という感じがあるが、源平合戦の伝説が各地に残っているらしく、四国の各地を歩いて、安徳天皇にまつわる風俗などに出会ったりする記述はとても面白い。で、まあ、いい感じに孤独なんですよね、吉田類さんという人は。
孤独であることは悪いことじゃないし、むしろ、もっと孤独でありたい、とか思う。「ひとりで居酒屋に入る」なんて言うと、たまに言っているこっちが驚くほど、驚かれることがあるけれど、ひとりでお店に入ってみないとわからないこともある。もし「ひとりで居酒屋に入るなんて信じられない」という人がいたら、本書を読んで、偏在する酒場詩人たち(わたしを含めてもらって良い)の気持ちを想像していただきたい。カウンターで、黙って飲んでいる酒場詩人は、寂しい気持ちを抱えているばかりではない。心地よい孤独、心地よいお一人様感覚というのが、そこにはあるんだよ。
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